全部欲しいのはワガママですか?~恋も仕事も結婚も~
「彼、なにをしている人?」

宝生製薬(ほうしょうせいやく)で働いてるって言ってました」

「やだ! 大企業!」


 メッセージでやり取りするうちに尋ねてみれば、魁は現在、誰もが知る有名企業である㈱宝生製薬の社員らしい。 
 うちもそこそこの大手だが、宝生製薬と比べたら会社の規模の差は歴然だ。

 彼が実際にどういう仕事をしているのかまでは知らないので、今度食事に行こうと誘われているし、そのときに聞いてみようかな。


「ていうか、楽しい写真を送ってくれるのね」

「はい。けっこう頻繁に」


 マメだな、と少々あきれる反面、魁からのメッセージを見て凝り固まった心がほぐれることもある。
 ただの知り合いという関係性だからこそ、気をつかわなくてもいいし、楽にやり取りができている。


「郁海も写真を送り返しなよ!」

「え、でも……これを撮るんですか?」


 オムライスは手をつけているどころか、半分近く食べてなくなっている状態だ。
 こんな食べかけのものを撮っても仕方ないと思うのだが。


「いいから送っちゃえ! 面白いじゃないの」


 たしかに、受け取った側は意外すぎて笑ってしまうだろう。
 由華さんに乗せられるがままに、私は持っていたスプーンを置き、パチリと自分のオムライスの写真を撮った。

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