全部欲しいのはワガママですか?~恋も仕事も結婚も~
「自撮りは? しないの?」
「それは恥ずかしいですよ。無理です!」
「じゃあ、私が撮ってあげる!」
戸惑っているあいだに由華さんにスマホを奪われた。
「笑って?」と指示され、微妙な笑みを浮かべたところで、シャッターが切られる。
「郁海の写真も一緒に送ったら、彼きっとよろこぶよ」
「……そうでしょうか」
小首をかしげながらも、『私も今日は先輩と外でランチ』という短い文章を添えて撮った写真を送る。
受け取った魁はきっと、なんだこれ、と放心するに違いない。
けれど魁は気難しい性格ではないし、きっと大丈夫だ。あとでなんとでも釈明できるし。
「年下男子かぁ。応援するわ!」
「由華さん、誤解してますよ」
「そう? 魁くんは郁海に気がありそうだけど? じゃなきゃ、わざわざ自撮り写真を送ってきたりしないでしょ」
たしかに魁が写真好きなのだとしても、送る相手は私じゃなくてほかの子でもいいのに、とは思う。
でも、気があるだなんて言いすぎだ。
魁にとって私は“姉”みたいなもので、再会したから懐かしくなって連絡してきているだけだろう。
「本部長なんてこっちからポイして、魁くんにしなさい」
「そんなに簡単にいきませんよ」
由華さんには前々から、駿二郎はやめておけと助言されている。
私の気持ちを尊重したソフトな言い方だけれど、彼女が私に不倫を辞めさせたいという思いは充分伝わってきている。
いずれ私が辛い思いをするのがわかっているからこそ、早めにケリをつけるべきだと教えてくれているのだ。
だからといって、魁に乗り換えるだなんて発想が突飛すぎる。
「それは恥ずかしいですよ。無理です!」
「じゃあ、私が撮ってあげる!」
戸惑っているあいだに由華さんにスマホを奪われた。
「笑って?」と指示され、微妙な笑みを浮かべたところで、シャッターが切られる。
「郁海の写真も一緒に送ったら、彼きっとよろこぶよ」
「……そうでしょうか」
小首をかしげながらも、『私も今日は先輩と外でランチ』という短い文章を添えて撮った写真を送る。
受け取った魁はきっと、なんだこれ、と放心するに違いない。
けれど魁は気難しい性格ではないし、きっと大丈夫だ。あとでなんとでも釈明できるし。
「年下男子かぁ。応援するわ!」
「由華さん、誤解してますよ」
「そう? 魁くんは郁海に気がありそうだけど? じゃなきゃ、わざわざ自撮り写真を送ってきたりしないでしょ」
たしかに魁が写真好きなのだとしても、送る相手は私じゃなくてほかの子でもいいのに、とは思う。
でも、気があるだなんて言いすぎだ。
魁にとって私は“姉”みたいなもので、再会したから懐かしくなって連絡してきているだけだろう。
「本部長なんてこっちからポイして、魁くんにしなさい」
「そんなに簡単にいきませんよ」
由華さんには前々から、駿二郎はやめておけと助言されている。
私の気持ちを尊重したソフトな言い方だけれど、彼女が私に不倫を辞めさせたいという思いは充分伝わってきている。
いずれ私が辛い思いをするのがわかっているからこそ、早めにケリをつけるべきだと教えてくれているのだ。
だからといって、魁に乗り換えるだなんて発想が突飛すぎる。