全部欲しいのはワガママですか?~恋も仕事も結婚も~
***

 週末、魁と食事に行く約束をした。
 土曜日ならお互い仕事が休みだし、翌日も日曜なので、話が盛り上がって帰る時間が多少遅くなっても大丈夫だ。気楽に話せる。

 場所は、魁が気になっているイタリアンレストランがあるらしく、そこを予約しておくと連絡があった。

 出かける準備を進める中で、なにを着て行こうかと急に迷い、クローゼットを開けて首をひねる。TPOは大事だもの。
 
 白のノースリーブのトップスに、マスタードイエローのロングスカートを合わせてみた。
 仕事でもなくデートもない。知り合いと食事に行くシチュエーションならこれでいいだろう。
 姿見で確認しながら、ふむ、とうなずく。

 いつも通りのメイクを施し、待ち合わせの場所へ向かう。
 到着したときにはすでに魁の姿があり、街ゆく女子の視線を集めていた。

 VネックになったネイビーのTシャツに、スリムなベージュのパンツをカッコよく着こなしている。
 肩幅は広いし、脚も長いので、壁を背にして立っているだけなのに目立っていた。


「お待たせ」

「いや、俺が早く着いたから。ていうか郁海はすごいなぁ。綺麗だからみんなこっち見てるよ」

「違う。見られてるのは魁だって」


 魁は自分がイケメンだという自覚はないのかな。
 昔はこんなに鈍感ではなかったと記憶しているけれど……。

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