全部欲しいのはワガママですか?~恋も仕事も結婚も~
***

 それからしばらくは平穏な毎日が続いた。
 月が変わって由華さんはデジタル推進部に異動になってしまったが、特に問題なく業務できているらしい。
「やってみなきゃ、やりがいがあるかないかわからないもんね」と笑っていた。さすがは由華さんだ。

 そんな中、私は商品企画部の里中(さとなか)部長から、ミーティング室に呼び出された。
 入口近くの椅子に私を座らせ、自身も同じように腰をかけた部長が、テーブルの上に書類を広げ始める。


「及川さん、君のチームから企画書はいくつか提出されているんだが、正直どれもパッとしないな……」


 呼ばれたときから里中部長の表情をうかがっていたけれど、良い話ではないのだろうと最初から察しはついていた。


「すみません。修正します」


 ダメ出しをされるのはよくあることなので、タブレットを片手に部長の話を聞こうとしたのだが。
 肝心の部長は腕組みをしたまま、う~んとうなって首をひねっている。なにが問題なのだろう?


「君が企画して売り出しているオープンシェルフとサイドテーブルがあるだろう?」


 部長が言っているのは、今年の春からうちの直営の店舗やネットの通販で販売している商品で、昨年私が出した企画書が採用された。

 海外から輸入したベッド周りのインテリアを、うちの寝具シリーズに合うように自社ブランド化したのだ。

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