全部欲しいのはワガママですか?~恋も仕事も結婚も~
「道長は営業部に復帰は無理かもしれないが、いずれ本社には戻すよ。もちろん郁海も」


 駿二郎の言葉を聞いて少しだけホッとした。
 これでまた、私も道長くんも本社へ異動になる芽が出てきた。


「もうそろそろいいか? 俺、戻らなきゃいけないから」

「ちょっと待って」


 片手を上げて背を向けた彼が、呼び止めた私のほうへ振り返る。


「最後にひとつ」

「なんだ?」


 彼に近づきながら大きく息を吸い込み、真正面から彼の顔を見上げた。

 もう迷わない。これで最後だ。


「私とは終わりにしてください」

「……郁海」

「二年間ありがとう。あなたが好きでした」


 自然消滅は私の性に合わない。気持ちにケリがつけられないもの。
 今日ここで彼を呼び止めたときから、これを伝えると決めていた。

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