全部欲しいのはワガママですか?~恋も仕事も結婚も~
「及川さんにお話があって、仕事が終わるのを待っていました。ここでは話せないので、場所を移動してもいいですか?」
「……はい」
彼女に促されるまま、私たちは近くにあるカフェに入った。
一番奥の人目につかない席を選び、テーブルを挟んで向かい合わせに座る。
ほのかさんはメイクをしているのかどうかわからないくらい飾り気のない見た目だけれど、清潔感があるし綺麗な顔立ちをしている。
失礼な言い方をすれば少々“地味”で、存在するだけで目立つ駿二郎とはタイプが逆だ。
よく見れば、彼女のお腹がちょっぴりふっくらしているではないか。
呼び止められたときにピンと来なかった自分の鈍さにため息が出そうになる。
「あの……私が今からなにを話すのか、だいたい想像はついてますよね?」
私がコーヒーを、ほのかさんがオレンジジュースを注文したあと、彼女が静かな口調で切り出した。
私のほうからペラペラと話すのは違うと思い、伏せ目がちに無言でうなずいて彼女の言葉を待つ。
「と、とぼけても無駄ですから!」
「そんなつもりはありません」
テーブルの縁にある彼女の両手は握りこぶしが作られていて、それが震えていることに気がついた。
夫の不倫相手に恨み言を言いに来たものの、緊張と不安に襲われているのだろう。
私もこうなれば、ウソで固めたり言い逃れをしたくはない。
ただ、別れたあとで彼の奥さんと対峙することになるとは思いもしなかったけれど。
「……はい」
彼女に促されるまま、私たちは近くにあるカフェに入った。
一番奥の人目につかない席を選び、テーブルを挟んで向かい合わせに座る。
ほのかさんはメイクをしているのかどうかわからないくらい飾り気のない見た目だけれど、清潔感があるし綺麗な顔立ちをしている。
失礼な言い方をすれば少々“地味”で、存在するだけで目立つ駿二郎とはタイプが逆だ。
よく見れば、彼女のお腹がちょっぴりふっくらしているではないか。
呼び止められたときにピンと来なかった自分の鈍さにため息が出そうになる。
「あの……私が今からなにを話すのか、だいたい想像はついてますよね?」
私がコーヒーを、ほのかさんがオレンジジュースを注文したあと、彼女が静かな口調で切り出した。
私のほうからペラペラと話すのは違うと思い、伏せ目がちに無言でうなずいて彼女の言葉を待つ。
「と、とぼけても無駄ですから!」
「そんなつもりはありません」
テーブルの縁にある彼女の両手は握りこぶしが作られていて、それが震えていることに気がついた。
夫の不倫相手に恨み言を言いに来たものの、緊張と不安に襲われているのだろう。
私もこうなれば、ウソで固めたり言い逃れをしたくはない。
ただ、別れたあとで彼の奥さんと対峙することになるとは思いもしなかったけれど。