全部欲しいのはワガママですか?~恋も仕事も結婚も~
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店舗での仕事には徐々に慣れてきた。
企画と呼べるほどのものでもないけれど、店でのフェアを考えて会社に提案してみたりして、どうにかやりがいを見つける毎日を送っている。
「お疲れさまです。お先に失礼します」
勤務時間が終わって、いつものように同僚に声をかけてから家路につく。
駅までの途中にスーパーがあるので、そこで食材を買うのが私の今のルーティンなのだが……今日はそれが崩れてしまった。
「あのぅ、及川さんですよね?」
店の裏手にある従業員通用口から出たところで、ひとりの女性に呼び止められた。
気の弱そうな、ふんわりとした雰囲気の人だ。年齢は私とそう変わらないくらいに見える。
だけど私はこの人に見覚えがない。
「そう……ですけど?」
「私、山路 駿二郎の妻で、ほのかと言います」
「あ……本部長の奥様でしたか。失礼いたしました」
私はあわてて頭を低く下げた。
このあと奥さんの顔を見るのが怖い。私はきっと顔面蒼白だろうから。
私とはこれが初対面だし、急に連絡もなく訪ねてくるなんて、どう考えてもおかしい。
駿二郎と私の関係を疑ってか確信してかはわからないが、彼の妻として私を糾弾しに来たとみて間違いない。
ドキドキと動悸が早まる中、私は身構えながらほのかさんと向き合った。
店舗での仕事には徐々に慣れてきた。
企画と呼べるほどのものでもないけれど、店でのフェアを考えて会社に提案してみたりして、どうにかやりがいを見つける毎日を送っている。
「お疲れさまです。お先に失礼します」
勤務時間が終わって、いつものように同僚に声をかけてから家路につく。
駅までの途中にスーパーがあるので、そこで食材を買うのが私の今のルーティンなのだが……今日はそれが崩れてしまった。
「あのぅ、及川さんですよね?」
店の裏手にある従業員通用口から出たところで、ひとりの女性に呼び止められた。
気の弱そうな、ふんわりとした雰囲気の人だ。年齢は私とそう変わらないくらいに見える。
だけど私はこの人に見覚えがない。
「そう……ですけど?」
「私、山路 駿二郎の妻で、ほのかと言います」
「あ……本部長の奥様でしたか。失礼いたしました」
私はあわてて頭を低く下げた。
このあと奥さんの顔を見るのが怖い。私はきっと顔面蒼白だろうから。
私とはこれが初対面だし、急に連絡もなく訪ねてくるなんて、どう考えてもおかしい。
駿二郎と私の関係を疑ってか確信してかはわからないが、彼の妻として私を糾弾しに来たとみて間違いない。
ドキドキと動悸が早まる中、私は身構えながらほのかさんと向き合った。