全部欲しいのはワガママですか?~恋も仕事も結婚も~
***
午後の会議を終えて自分の部署に戻るため、エレベーター機を待つ。
ポンッという音と共に扉が開くと、そこには私がよく知る人物がひとりで乗っていた。
「お疲れ」
「お疲れ様です、山路本部長」
他人行儀に頭を下げる私を横目で見て、その男性は髪をかきあげながらクスクスと笑った。
男の名は、山路 駿二郎。
年齢は四十三歳で、我が社の営業戦略本部の本部長だ。
……そして彼が、私の交際相手である。
「なに笑ってるの」
「いや、郁海がかわいくて」
「会社だからちゃんとしただけなのに……」
今はふたりきりだからこんな話し方だが、社内恋愛はバレやすいというし、普段はどんな状況においても気を張っている。
会社にいるときには“上司と部下”を貫かねば。どこで誰が見ているかわからないのだから。
絶対にバレてはいけないし、噂にすらなってもいけない。
午後の会議を終えて自分の部署に戻るため、エレベーター機を待つ。
ポンッという音と共に扉が開くと、そこには私がよく知る人物がひとりで乗っていた。
「お疲れ」
「お疲れ様です、山路本部長」
他人行儀に頭を下げる私を横目で見て、その男性は髪をかきあげながらクスクスと笑った。
男の名は、山路 駿二郎。
年齢は四十三歳で、我が社の営業戦略本部の本部長だ。
……そして彼が、私の交際相手である。
「なに笑ってるの」
「いや、郁海がかわいくて」
「会社だからちゃんとしただけなのに……」
今はふたりきりだからこんな話し方だが、社内恋愛はバレやすいというし、普段はどんな状況においても気を張っている。
会社にいるときには“上司と部下”を貫かねば。どこで誰が見ているかわからないのだから。
絶対にバレてはいけないし、噂にすらなってもいけない。