離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
「ええと、では私が洗うので、忍さんは水で流してもらえますか?」

「わかった」とうなずき、泡のついた食器を受け取る。
 
 彼女が洗った食器を、俺が水で流す。
 
 キッチンに並んで立つなんて、まるで本当の夫婦みたいだ。
 
 そんなことを考えて浮かれているのは、俺ひとりだろうけど。
 
 しばらく無言で洗っていると、「忍さん、ありがとうございました」とお礼を言われた。
 
 なんのことだろうと琴子を見下ろす。
 
「今日はナジャーやルルに会えてとても楽しかったですし、ホームパーティーを私に任せてもらえてうれしかったです」
「いや、礼を言うのはこっちのほうだ。今日は本当に助かった」
「商談はうまくいきそうですか?」
「あぁ。琴子のおかげだ」
 
 俺の言葉を聞いて、琴子は「よかった」とほっとしたようにつぶやいた。
 
「アハメッドが、琴子は素晴らしい女性だとほめていたよ」
「本当ですか? そんなにお料理を気に入ってくださったのかな」
 
 琴子はそう言ってうれしそうに微笑む。
 
「お料理を教えてくれた大使夫人のおかげですね。今度きちんとお礼をしないと」
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