離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
 琴子は涙を拭おうとする。
 
 けれど手が泡だらけなことに気づいて、困ったように眉を下げた。
 
「俺が涙を拭ってもいいか」
 
 思いきってたずねると、琴子は驚いたようにこちらを見た。
 
 少しためらってから、おずおずとうなずく。
 
「顔を上げて」
 
 彼女のあごをすくい上げる。
 
 視線を上げた琴子と目が合う。
 
 潤んだ瞳で見つめられ、どうしようもないほどの愛おしさがこみあげてきた。
 
 冷静になるためにゆっくりと息を吐き出してから、琴子の濡れた目元に手を伸ばした。
 
「ん……っ」
 
 指先が触れた瞬間、琴子の肩が小さく跳ねる。
 
 慎重に指を動かし、優しく涙を拭う。
 
 白く柔らかい頬の感触に、ぎゅっと胸が締めつけられた。
 
 彼女は俺の妻だけれど、決して俺のものにはならない。
 
 彼女がそれを望んでいないことは、ちゃんとわかっている。
 
 そう必死に自分に言い聞かせる。
 
 そのとき、「本当にラブラブですね」と明るい声が聞こえた。
 
 はっとして前を向くと、リビングを片付けていたスタッフたちがこちらを見ていた。
 
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