男装獣師と妖獣ノエル ~騎士団で紅一点!? 幼馴染の副団長が過保護です~
プロローグ 秘密の友達
 物心ついた時から、私には毎日そばにいてくれる友達がいた。

 一緒に山を駆けるのが好きで、薬草や食べられる果実を探して、小動物を追いかけた。狼や熊が出た時は一緒に立ち向かい、寒い日は、肩を寄せ合って暖を取りもした。

 面倒見がいいその友達は、何でも知っていて、まるで兄のように世話を焼いてくれた。寂しくなると、ベッドが狭くなるのも構わず潜り込んできて、私は悲しい事も忘れて眠りに落ちるのだ。

 父さんと母さんは、私が『彼』について話すたび、少しだけ悲しそうな顔をした。


 ごめんね、私達には見えないよ。ごめんね……

 両親は「どうして」と理解できない私に、誰にも言っちゃいけないよと、そう約束させた。人間の友達が出来なくったって、父さんと母さんと、一緒に暮らす秘密の友達の存在があれば、怖い物は何もなかった。


 家は裕福ではなかったけど、確かに私は、幸せだったのだ。

 私は村人に毛嫌いにされていたから、他人との付き合いはあまりなかった。子どもは特に器量の狭い奴が多くて、負かされるのが悔しくて、秘密の友達と特訓して、いつしか喧嘩だけは強くなった。
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