そして僕はまた、君に出会える時を待つ

「大人にはさ、色々……あるものなんだよ」


彼の言う”大人”に、僕は入っていないかもしれないけれど。

ここでムッとしたら、なんだか子供っぽいし。

負けた感じになるんじゃないかって、そんな気がして。


僕は、少し余裕ぶって、彼の真似をして微笑んで見せた。

「……そうですね、色々ありますよね」


虫も、人間も。

オスという生き物には、張り合うという本能があるものなんだな……


そんなことを実感しながら。

僕はマスターが持ってきてくれたカレーを食べ、コーヒーを飲んで、店を後にした。



ちょっとだけ、胸の奥に疼く痛みを残し。

同じように疼く、腹の奥の熱を抱えながら。


その日、僕は生まれて初めて、至極オスらしい理由で、眠れぬ夜を過ごした。
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