再会は甘い恋のはじまり…とはかぎりません!(おまけ追加しました)

ランチの繁忙時を過ぎた頃、『わかたけ文庫』の莉子さんもやってきた。

莉子さんは祥がホール係をしていることに驚いていたが、祥も莉子さんが『珈琲』のお客様になっていたので驚く。

「祥ちゃんが美味しいって教えてくれたから、ランチに時々お邪魔してるのよ」
バタートーストが一番好きなの、と莉子さんは嬉しそうに言った。

わかたけ文庫には、あの後数回行っている。お休みの日にもう一度ゆっくりと遊びに行き、仕事帰りに本を交換しに行ったりもした。

シンポジウム期間中には兄が一緒に行きたいと言うので、義姉と共に連れて行った。
「久しぶりだね」と兄は再会を喜んでいたが、莉子さんは二人を見て明らかに動揺し、挙動不審になっていた。

理由は聞かなかったが、どうやら過去に何かあったらしい。

魔女に意地悪されるお姫様。
手下は何も出来ずオロオロするだけ。

そんな図しか思い浮かばない。
残念なことだ。

莉子さんはバタートーストを食べ終わった後、つむぎをあずかると言ってくれた。
「祥ちゃんの仕事が終わるまで、娘たちと遊ばせておくわよ。もう幼稚園のお迎えの時間だし」

「一緒に行く?」
つむぎにも聞いてくれる。

つむぎが嬉しそうにコクコクと頷くので、お願いすることにする。
つむぎは新しくできたお友達に夢中なのだ。

< 86 / 135 >

この作品をシェア

pagetop