男装獣師と妖獣ノエル 2~このたび第三騎士団の専属獣師になりました~
 人混みを歩きながら、ラビはノエルとこっそり話した。

 王都の人々は、在住者だけでなく各地方から集まっている人間も多い。そのため、自分の行動や見た目を気にする者も多いのか、露骨に態度を出して嫌がるという風潮も少ないようだった。
 人々は無視を決め込み、自然と彼女から距離を取る。そこに出来たスペースを、ノエルが悠々と歩いていた。中には顔を顰める者もいたが、揉め事を起こすようなきっかけを作りたくないように、当人に聞こえる距離で話しをする人間はいなかった。

『貴族や大商人あたりは注意した方がいいだろうな。地位を持って王都に根を下ろしているような連中は、自分が正しいと信じて、非難も差別も平気でやるような人間も多い』

 そう考えると、こちらの姿が見えない状況は痛いな、と呟いてノエルが舌打ちした。人間よりも聴覚が優れているから、遠くからの囁き声でも拾ったのかもしれない。
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