男装獣師と妖獣ノエル 2~このたび第三騎士団の専属獣師になりました~
 ラビとしては、最低限でもいいので暮らしを送れるための、店や飲食店を確保出来るかが心配だった。セドリックがいたおかげで宿はスムーズに契約も済んでいたが、実際に買い物をしたり、食事をしないと環境的な善し悪しは分からない。

「十八歳になるまで、ここにいなくちゃいけないのか……」

 思わず項垂れると、ノエルがふわふわとした尻尾で『元気出せよ』と優しく背中を押してきた。

『騎士団から獣師の仕事が入るだろうし、この前の氷狼の件と同じように出張になるってんなら、王都の外にいく機会も増える』
「そうかもしれないけど。オレとしてはさ、伯爵達に悲しい顔をさせたくないから、食べる所とかお店とか、そういう場所をちゃんと確保するまでは気が抜けないというか」

 両親が他界して一人暮らしを始めた際、牛乳を売れないとする店や、肉を売りたくない、卵は別の所で買っておくれ……と、天涯孤独な身になった事を同情して態度は控えめながらも、村人に店先で門前払いを受けた。
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