一度は消えた恋ですが――冷徹御曹司は想い続けた花嫁に何度でも愛を放つ
小椋紗羽は座ったまま、ずっと俯いていた。
まだ両親の通夜の席だという実感がわかない。
時間が一昨日の夕食時に巻き戻らないだろうかとさえ思う。
(お母さんが作ってくれたパエリアおいしかったな)
おかわりしてパクパク食べていたら、父に『太るぞ』と揶揄われたっけ。
『少し早いけど、白糸の滝に紅葉を見に行く』と言っていた両親の仲よさそうな笑顔。
(……軽井沢の別荘に一緒に行けばよかった)
日曜日に塾のテストがあるからと、ひとり屋敷に残ったのだ。
自分がいたとしても事故が防げたわけではないとわかっているが、紗羽はずっと後悔し続けている。
(どうして一緒に行かなかったんだろう。お父さんとお母さんが私だけ置いて逝くなんて……)
紗羽の周りでは会社の人たちがあれこれと喋っている。
お葬式のこと、会社のこと、紗羽のこと……。
(ひとりになりたい……)
ささやかな願いも叶わないまま、紗羽は通夜の席に座り続けていた。