一度は消えた恋ですが――冷徹御曹司は想い続けた花嫁に何度でも愛を放つ
ゆかりは泣いている紗羽の肩を抱くようにして、ベッドまで歩いた。
なにも言わずに、ただポロポロと涙を溢す紗羽と並んでベッドに腰掛けてくれた。
「私はずっと紗羽の側にいるから」
肩を抱きながら、ゆかりは何度も同じ言葉を言ってくれた。
ゆかりの言葉は、閉ざされていた紗羽の心を開いていく。
「何度も連絡もらったのに、返信出来なくてゴメン……」
紗羽は絞り出すような声で、ゆかりに謝った。
もともと言葉少なな紗羽を一番理解してくれている友人なのに、なにも連絡できなかった。
ゆかりは気にするなというように首を振る。
「こっちこそ無理やり押しかけてごめん。でも、ひと言でいいから連絡がほしかったんだ」
「なんでもいいの?」
「紗羽からなら、絵文字だけでも嬉しい」
ゆかりは真剣な顔で紗羽を見つめた。
彼女が屋敷に来るたびに小椋家の雰囲気が少しずつ変わっているので、紗羽を取り巻く環境が悪くなっているのではと心配だったのだ。
葬式からひと月も経たないうちに、小椋家には孝二一家が住むようになっていた。
ゆかりが紗羽に会いにきたら志保は嫌そうな顔をするし、子どもらは屋敷の中で好き勝手に振舞っている。
微妙な空気の変化を感じ取って、親友の居場所がなくなるのではと危ぶんでいたのだ。
「約束して。ひとりで抱え込んじゃダメだよ」