一度は消えた恋ですが、あなたの愛を取り戻しました
玄関から入ってきた翔をひと目見て、紗羽は(ああ、やっぱり兄弟だわ……)と思った。
翔は長い髪を金に近い茶色に染めていた。
ワイドパンツをはいて黒のタンクトップに派手な色のシャツを羽織っているだけの軽装だ。
いつもスーツでビシッと決めている匡と雰囲気はまったく違うのだが、整った顔立ちは驚くほど似ている。
「はじめまして! 君が紗羽さん?」
「は、はい。よろしくお願いいたします」
大きな声で挨拶されて、彼をボーっと見つめていた紗羽も我に返った。
「ゴメンね。結婚式に出席できなくて」
「いえ、お仕事がお忙しかったんでしょう?」
「そうなんだよ。初めて大作の依頼がきちゃって」
初対面の紗羽でも、翔とは気軽に話せた。彼独特の人懐っこさがあるようだ。
翔はずんずんとリビングの方へ歩いていく。
もちろん彼の家なのだから構わないが、遠慮のない人だなと紗羽は感心してしまった。
「家政婦さん?」
「あ、はい」
三船にも気安い口調だ。
「のどが乾いちゃった。冷たいコーヒーもらえるかな」
どかりとリビングのソファーに陣取ると、翔は三船に甘えた声を出した。
「すぐにお持ちいたします!」
三船がバタバタとキッチンへ走っていく。
珍しく慌てている彼女も、翔のペースに振り回されているのだろう。
紗羽はなんだか楽しくなってきて、翔の向かい側のソファーに腰を下ろした。
「あの、もしかして帰国なさること匡さんに伝えていないんじゃありませんか?」
「うん、よくわかったね」
改めて、翔がじっと紗羽の顔を見つめてきた。