俺様御曹司が溺甘パパになって、深い愛を刻まれました
タクシーの運転手とのやりとりが終わり、音夜が戻ってくる。名刺も交換でき、とりあえずは話はついたようだ。


「支配人に連絡とった?」

「はい、女将にも。ただ、現時点では大きなトラブルではないので、報告のみです。二人に出社を促すかの判断を一緒にしていただきたくて……」


端的につげると、音夜はふと表情を緩めた。


「昔の美夜なら、自分でなんとかできる! って連絡しなさそうなのに……変わったな」


成長を讃えるぬるい目で見られ、居心地が悪くなった。


「わたしだって成長します。いつまでも世間知らずじゃないんですよ」

「だな。元々、気概もセンスもある。足りないのは経験だけだった」

「褒めてます?」

「勿論。失敗は悪いことじゃない。同じ失敗はバカのやることだけど、経験は人を成長させるものだよ」


音夜はの手のひらが頭をくしゃりとかき混ぜる。
その重みで首が前にでる。


「現時点では二人を呼び出す必要はない。俺もいるしね」


自信満々。不適に笑う音夜が頼もしいと感じた。

タクシー会社には、改めて朝一番で連絡をすることにした。困ったのはナオの方だった。
何を話しても、何を聞いても肝心な理由を話さない。


事態は膠着したまま、刻一刻と時間は過ぎた。
勤務時間をオーバーし、日付が変わってしまう。
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