忘れさせ屋のドロップス


「副作用ってさ、こればかりは人それぞれだし、誰にもわかんない。

1週間で思い出す人もいれば、1年たっても忘れたままの人もいる。ドロップスは未承認のサンプルだから勿論データ上の話しだけどね。

……でもね、言ったよね?副作用は、その人が一番『忘れたくないモノや人』を忘れてしまうこと。

有桜ちゃんが『1番忘れたくない人』は、遥だったってこと」

「……有桜が俺の居ないとこで、泣いてるの分かってたのに……有桜が倒れるまで、気づいてやれなかった」


「遥、これもデータ上の話だけど、忘れてしまった本人の記憶を取り戻すには、忘れたくないのに、忘れている人物、つまり遥との接触が一番の薬になるから」 


「……でも今まで側にいてさ、有桜にしんどい思いさせたのも俺だし、これからさせないとも限らないだろ?……ならいっそ、俺のことなんか忘れてた方が」  

「有桜ちゃんは?」

「え?」

「有桜ちゃんの気持ちはどうなるの?遥のことが好きで、忘れたくなくて、それなのに今副作用で一時的に遥を忘れてしまってる。有桜ちゃんは、それでいいって言うと思う?」


「俺は……」

分からない。有桜が俺のことを忘れていた方がラクなのか、そうじゃないのか。


姉貴が灰皿に煙草を押し付けて、コーヒーに口に含んだ。
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