忘れさせ屋のドロップス

「じゃあ遥だったら?」

「え?」

「今、もし遥は有桜ちゃんのこと忘れてしまったら?それでいい?」

「俺は……」

答えは決まってる。有桜のこと、ちゃんと好きだって言えるまで側に居たい。

今更、全部を忘れてなかったことにするなんて、俺には到底無理だから。  

「遥、有桜ちゃんを大切に思うなら、一緒に居てやりなよ。辛くても……有桜ちゃんは、遥を……きっと思い出すから。……本当は忘れたくないくらい、遥が好きなんだよ」
  
姉貴の携帯が鳴って、姉貴が仕事に戻ってからも俺は暫く椅子から立ち上がられなかった。

まだほんの少しだけ迷いがあったから。有桜の側に居てもいいんだろうか。

有桜は俺を思い出すことを望んでくれてるんだろうか。泣かせてばかりで、ちっとも側に居てやれない俺を、有桜はいつか思い出してくれるんだろうか。


……もしかしたら、有桜は望んでないかもしれない。俺のことでいつも、泣いてるから、自信がなかった。

ーーーーそれでも俺は、有桜の……。

俺は味のしないコーヒーを一気に飲み干して、有桜の病室に向かった。
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