忘れさせ屋のドロップス
コンコンとノックの音が響いて私が振り返ると、さっきの男が入ってきた。
「点滴終わった?」
こくんと頷いた私を見ながら、点滴で青くなった私の手に男が目をやった。
「……ごめんな」
どうして謝るんだろう。胸がチクンとする。
「私が、……あの勝手に倒れたから、その、助けていただいて有難う御座います」
男がパイプ椅子に座る。
私は男の顔をまじまじと見た。綺麗な顔だ。切長の薄茶色の瞳に、形の良い薄い唇、指も長くて手が大きい。何より、色っぽいというか、大人っぽい。
「何?何でじっと見んの?」
「あ、あの、ごめんなさい」
「……別にいいけどさ」
男は少しの間黙ってから、唇を湿らせた。
「なぁ」
「え?は、い……」
「俺の名前だけどさ、佐藤遥。佐藤さんの佐藤に、遥彼方の遥」
遥……はるか……。初めて聞く名前なのに、なんだか呼んだことがある気がした。
「あ、あの私は」
「有桜。鈴木有桜。ある無しの有に桜だろ」
「何で?」
「姉貴に聞いたから。佐藤渚は俺の姉貴だから。……有桜、誰と住んでたかわかる?」
ーーーーあ、渚さんの弟だったんだ。
あと……私?そうだ、私はあの部屋で誰と住んでたんだっけ?誰と一緒に眠ってたんだっけ?
「点滴終わった?」
こくんと頷いた私を見ながら、点滴で青くなった私の手に男が目をやった。
「……ごめんな」
どうして謝るんだろう。胸がチクンとする。
「私が、……あの勝手に倒れたから、その、助けていただいて有難う御座います」
男がパイプ椅子に座る。
私は男の顔をまじまじと見た。綺麗な顔だ。切長の薄茶色の瞳に、形の良い薄い唇、指も長くて手が大きい。何より、色っぽいというか、大人っぽい。
「何?何でじっと見んの?」
「あ、あの、ごめんなさい」
「……別にいいけどさ」
男は少しの間黙ってから、唇を湿らせた。
「なぁ」
「え?は、い……」
「俺の名前だけどさ、佐藤遥。佐藤さんの佐藤に、遥彼方の遥」
遥……はるか……。初めて聞く名前なのに、なんだか呼んだことがある気がした。
「あ、あの私は」
「有桜。鈴木有桜。ある無しの有に桜だろ」
「何で?」
「姉貴に聞いたから。佐藤渚は俺の姉貴だから。……有桜、誰と住んでたかわかる?」
ーーーーあ、渚さんの弟だったんだ。
あと……私?そうだ、私はあの部屋で誰と住んでたんだっけ?誰と一緒に眠ってたんだっけ?