忘れさせ屋のドロップス
なぜだか遥が、慣れた手つきで扉を開けると、いつもの見慣れた部屋が広がっていた。
遥がパチンと電気を点けると、そのまま寝室まで私の手を引いていく。そして私をベッドに座らせた。
「疲れただろ。今日はもう休めよ」
乱雑に畳まれてない洗濯物の中から私のグレーのスウェットを掴むとベット脇にぽいと置いた。何で私のスウェットが分かるんだろう。
「あ、あの、有難う」
「どーいたしまして」
私はシャワールームでスウェットに着替えると綺麗に畳まれている、ベットの上の黒の毛布に手を伸ばして広げた。
ふわりと甘い匂いが鼻を掠めた。この甘い香り、渚さんの匂い……だっけ。さっき車内で一緒だった遥の匂いにも似てる?
コンコンとノックされて寝室の扉が開いた。
「明日、早起きしなくても大丈夫だから、有桜や姉貴の飯とかも俺がやるし」
「え?あの、私」
「倒れたばっかだろ、よく休めよな」
黒の毛布を握りしめてる私を見ると、遥がふっと笑った。
「じゃあな、おやすみ」
頷いた私に、それだけ言うと遥が扉を閉めようとする。
「待って!あの、遥さ…あっ、遥は今から家に帰るの?」
さん付けで、呼びそうになって慌てて訂正した。遥が小さく笑った。