忘れさせ屋のドロップス
「綺麗だね!すごいね!広いね!」
初めてちゃんと海を見る私にとって目の前の景色全てが新鮮で、気分が高揚した。
「何?」
隣の遥が、肩を震わせて笑っていた。
「あ、あの子供……っぽいよね」
「いや、連れてきて良かったなって。靴脱いで貝殻拾って来いよ」
「え?いいの?」
「どーぞ、お好きなだけ」
遥が唇を持ち上げた。
裸足であるく砂浜の感触は思ってた以上に気持ちよくて、寄せては返す波の合間に見える貝殻を夢中で拾う。
耳馴染みの良い波の音がただただ心地よくて、遠くに見える水平線がどこの街に繋がっているのか、想像するだけで楽しくて。
振り返れば、遥が小さく手を上げてくれた。
どのくらいそうしてただろうか、いつの間にか、少しずつ波が高くなっていることに私は気づかなかった。
「有桜っ!」
「わっ」
急に今まで見ていた視界が高くなって、貝殻がいくつか掌から滑り落ちる。
残りを落とさないように、慌てて両手で包み込んだ。
「あぶねーな、濡れるとこだろーが」
遥の声が後ろから聞こえてきて、ウエストに回された遥の腕が見える。
私は、ようやく遥に後ろから抱きかかえられていることに気づく。