忘れさせ屋のドロップス
「はーるか、お待たせっ」
海から戻ってきて、夕食に遥とハンバーグを作っていたら、両手にスーパーの袋をかかえたスーツ姿の秋介さんがやってきた。
「待ってねぇし」
振り返った遥が、フライ返し片手に眉を寄せた。
「おっ、二人並んでキッチンで料理とか、俺も早く渚とやりてーな」
「姉貴に蹴飛ばされんぞ」
「渚に蹴られんの慣れてるからさ」
「蹴られ慣れてるとか変態だな、俺は無理」
兄弟みたいな絶妙なやり取りに、思わずクスッと笑ってしまう。
「有桜、笑うなっ」
「有桜ちゃんの好きなリンゴジュースも買ってきたからね」
秋介さんは、にっこり笑うと冷蔵庫に手早く缶ビールを放り込んで、遥を後ろから抱きしめた。
「お、ハンバーグ!俺好きー。遥の匂いも好きー」
「やめろ!マジで変態だな!有桜が見てんだろーが」
大袈裟に腕を振り上げながら、遥が秋介さんを睨んだ。
(……あれ?なんだろう……)
遥に抱きついている秋介さんの姿を思わずじっと見てしまった。
「ところで有桜ちゃん、体調大丈夫?」
(どこかで見たような……)
「あ、大丈夫、です。遥と秋介さん、仲良いんですね」
ーーーー気のせいだろう。
だって私と遥は最近出会ったばかりだ。出会ってから、遥と秋介さんを交えて会うのは初めて……だっけ?
なのに何で二人が一緒の姿を見たこと……。あれ、そもそも、私いつ秋介さんに初めて会ったんだっけ……?
「考えんな」
遥がコツンと私の額を突いた。
「え?」
「秋介は姉貴と付き合い長いから、俺も時々会ってるから。有桜が秋介と会ったのは、コイツは三階の姉貴の部屋出入りしてるから、その時だろ、多分」
遥は何で私の考えてること分かっちゃうんだろう。
「そっか……。何で思い出せなかったのかな」
首を傾げた私を見ながら、遥がハンバーグを乗せたプレートを2枚手渡してくる。
「別に、うっかりするだろ、誰だって」
遥が私の頭をくしゃっと撫でた。
「姉貴も、来るし、あっちのガラステーブルに置いてくれる?」
「うん」
「有桜ちゃん、一緒に運ぼ」
秋介さんが残りの2枚のプレート 遥から受け取る。