忘れさせ屋のドロップス

タイミング良く、カランと扉が開いて、黒のタイトワンピース姿の渚さんが、スイカ片手に入ってくる。

「ただいま、あ、ハンバーグ?好きー」

白地のカーディガンを脱ぎながら、渚さんがガラステーブルを嬉しそうに眺めた。

その後ろから秋介さんが渚さんを覗き込む。


「渚ーお疲れ様ー、指輪も似合ってる」

「捨てるよりマシだからな」

「渚ー恥ずかしがんなよー、マジでいい匂い」


覆いかぶさるようにして抱きついた秋介さんの爪先を渚さんが踵で踏みつける。
 
「痛ってー!」

「触んな」


渚さんが、スイカを押し付けるように秋介さんに渡すと、トボトボと冷蔵庫へと向かっていく。

渚さんと秋介さんのやり取りを見ながら、遥と顔を見合わせて笑った。

「なんか…いいね」

「有桜?」

「遥がいて、渚さんと秋介さんがいて、私、すごく楽しい。ほっとするの」

少しだけ間があって、遥が、ふっと笑った。
 
「……良かった」

「遥?」 

「俺は有桜が笑うとほっとする」

「え?」

「飯冷めるから食おーぜ」 

見上げた遥の子供みたいな笑顔に私は、勝手に顔が赤くなる。

恥ずかしくて、言えなかったけれど、私こそ遥の笑顔を見ると、ほっとする。

もっと遥の笑った顔が見たいと思う自分が居た。
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