忘れさせ屋のドロップス


遥と吉野さんが出て行った扉を眺めながら、私は気づいたら首を傾げていた。

(吉野さんの配達、今まで誰がしてたんだっけ?)

遥が吉野さんが配達のお手伝いを当たり前のように引き受けたのも不思議だった。


(私がしらないだけで前も行ったことあるのかな?)

冷蔵庫を開けて、お昼のオムライスの材料を取り出す。玉ねぎ、ピーマン、にんじん、卵、お肉、と並べてから肝心なモノをきらしていることに気付く。

「ケチャップ!」

一瞬、遥に連絡しようとして、連絡先を知らないことに気づいた。

メモにすぐ帰る旨だけ書いて、テーブルに置くと、私は携帯とお財布を鞄に入れて靴を履いた。

扉を開けていつものようにコンクリ剥き出しの階段を降りていく。


商店街の中をくぐり抜けて最寄りのスーパーが見えた時だった。


「っ!……」


後ろから突然右腕を掴まれ、細い路地裏に引っ張り込まれる。振り返った私は、
   


ーーーー声が出なかった。

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