忘れさせ屋のドロップス
その人に会うのは二ヶ月半ぶりだった。
私と同じ長い黒髪を一纏めにして、化粧っ気のない黒い大きな瞳で私を睨みつけていた。私の全てを否定する大嫌いな人。
「随分探したのよ、有桜っ!」
今日は仕事は休みなんだろうか。見慣れたスーツ姿ではなくて、フレアのスカートにTシャツ姿だった。
「来ないで」
思わず後ずさりした私の右手首を、強く掴まれて、ぐいと引き寄せられる。
どうして此処が分かったんだろう。
駄目。このままじゃ、連れ帰されてしまう。
早く逃げないと。
「今まで何処にいたの!」
「お母さんに、か、関係ないでしょ!」
「関係ない?わざわざ携帯会社に連絡して、あなたのGPS調べて貰ったのよ。この辺りから、あなたの電波が出てるって話だったわ。なんならもうじき住所もわかるはずよ」
(嘘……)
そんなことしたら、渚さんと遥に迷惑がかかる。二人には絶対に迷惑かけたくない、かけられない。
「そんな、勝手に……っ」
「いいかげんにしなさいよ!私はあなたの保護者よ、あなたの全てを知る権利があるの」
都合の良い時だけ保護者を名乗る。私がいなくても平気なクセに、今まで二ヶ月以上も放ったらかしだったじゃない。
「保護者ヅラしないでよ!私は……もう、あなたのお人形じゃない!」
「何なの!暫く会わないうちに生意気になったわね!帰るわよ!」
「やめて、ほっといて!」
手首は鬱血しそうなほどに固く掴まれている。