冷徹御曹司は過保護な独占欲で、ママと愛娘を甘やかす
豊さんはこれまでの経緯をふたりに説明した。
私に惹かれていながら、可世さんと婚約状態だったこと。可世さんと望が駆け落ちした後、私と関係し未来を授かったこと。私がいなくなり、諦めきれず探したところ、未来の存在を知ったこと。

「私は豊さんに恨まれているとずっと思っていたから、豊さんに未来の父親はあなただって言わずに、表向き作田くんに父親のふりをしてもらっていたの。私たち、お互いの気持ちを知ったのが本当に最近で……」

驚いた顔をする弟と隣の豊さんを見比べて言った。

「ずっと、学生時代から豊さんに憧れていたの。婚約者の可世さんの存在を知っていたから、叶えるつもりがなかったけれど」
「姉ちゃんも? それじゃあ、ふたりはもともと好き合っていたってこと? 今も合意で一緒にいるってこと?」

弟の問いに、豊さんが頭を下げた。

「すまないことをした。俺が早く、可世と婚約関係について話し合いを持っていれば、ふたりを追い詰めることもなかった」
「いえ、違うんです。私こそ、父の言葉に逆らえずに……」

可世さんが涙ながらにうつむいた。

「望くんのことを父に相談しているんです。望くんを好きになって、交際関係になって、豊さんに申し訳ないから婚約を解消したいと。でも、父は許してくれなくて。望くんやご実家に圧力をかけると言われて」

彼女もまた、やむに已まれぬ事情があったのだ。我が家に怒鳴り込んできた中安議員夫妻は、話し合う余地のある人たちには見えなかった。実の娘ですら、話を聞いてもらえなかったのだかもしれない。
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