冷徹御曹司は過保護な独占欲で、ママと愛娘を甘やかす
「私たち四人のわだかまりがとけたなら、まだ、みんなやり直せると思うんです」

私は言った。

「私は未来を授かった経緯を黙っていたことを、両親に詫びるつもり。望はお父さんとお母さんと話して。あなたがいなくなったことで奥村フーズの状況は大きく変わったんだから。そして、ふたりで可世さんのご両親にも会いに行って」

望が神妙な顔で頷いた。親を苦しめたことは、望自身が一番わかっているのだろう。

「可世さんのお腹に、赤ちゃんがいるんでしょう? 生まれてくる赤ちゃんのためにも、禍根を残さないようにしましょう」
「ありがとうございます」

可世さんがお腹を押さえて涙をこぼした。




ふたりは、笛吹製粉を出てその足で私の実家に向かったようだ。
ずっといい子にしていた未来も限界で、騒ぎ出したので、私も急いで会社を後にした。幸いと言っていいのか、勤務していた時代の同僚にはひとりも会わなかった。

その夜、豊さんは普段より少し早く帰宅した。私は未来を寝かしつけている最中、豊さんは上着を脱ぎ、私たちのいる布団の横に寝そべる。

「ぱっぱぁ、あー」

寝ぼけた未来が豊さんの顔をぱちぱちたたいていたけれど、眠気に負けたようで瞼が落ちる。
未来の眠りが深くなるまで、私たちは並んで見つめていた。やがてお腹をぽんぽんとたたく手を止めると、深い寝息が響いた。

私と豊さんはそっと和室を出る。
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