冷徹御曹司は過保護な独占欲で、ママと愛娘を甘やかす
「好きなものを、と言うと困るだろう。コースにしよう」
「あの」

お気遣いなく、と言おうとしてやめた。彼は空腹なのかもしれないし、食事に付き合うのも気晴らしの一環なのかもしれない。

「なんだ。あまり食欲はないか?」
「いえ、お付き合いします」
「ディナーコースだけれど、頼めば軽めにしてもらえる。メインは少し控えめにするか」

私はこくこくと何度か頷く。正直、緊張でろくに食べられない気がした。

「無理そうだと思ったら、いつでも言ってくれ」
「いただきます。大丈夫です」
「食事だけじゃない。今夜のこともだ」

そう言う豊さんは私を見ない。本当は私の存在が忌々しくて、一緒にいたくもないのかもしれない。そう考えると、胸がぎゅっと痛む。

「私が決めて、ついてきました」

結果として、彼にとっては嫌な思い出のひとつになるだろう。だけど、私にとっては大事な夜になる。気が変わらないでほしい。私は願うように思う。

「そうか」

豊さんは低く答えた。



食事はどれもとても美味しかった。量を控えてもらったおかげで、残さず食べることができてホッとする。コーヒーまでいただくと豊さんが言った。

「部屋に行く。いいな」

私はおずおずと頷いた。
これから彼に抱かれるのだ。

「さっき、部屋を取ったからここしか空いていなかった。悪いな」

そう言って通されたのはセミスイートだ。一般客室が埋まっていたということだろうか。申し訳ないような気もしたけれど、彼にとっては狭苦しくないほうがいいのかもしれない。
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