冷徹御曹司は過保護な独占欲で、ママと愛娘を甘やかす
だけど彼は今、私を抱いてもいいと思っている。慰みに使いたいのだろうか。単純な気晴らしだろうか。
なんでもいい。豊さんと一度でも触れ合えるなら。
心に封印してきた気持ちが鮮やかにあふれる。憧れは恋に形を変え、この千載一遇のチャンスにとびついた。

「私でよければ、ご一緒させてください」
「一晩だぞ」
「はい」

頷いた私から、豊さんが目をそらした。一瞬その横顔が苦しげに歪んだようにも見えたけれど、それ以上の変化はない。彼は立ち上がった。

「決心が鈍らないうちがいい。今夜、これからにしよう」
「はい、かまいません」

彼に伴われ、私は執務室を出た。廊下には誰もいなかったけれど、私は急いで彼から離れ、総務部に荷物を取りに行った。待ち合わせは地下駐車場と決めて。



外資系のラグジュアリーホテルは少なくとも笛吹製粉関連の食事会やパーティーで使われたことのない場所だった。外観はスタイリッシュな近代建築で、ロビーは地中海風の青と白を基調とした空間だ。豊さんがプライベートで使うのはこういったところなのかもしれない。

「食事にしよう」

そのまま部屋に直行かと思ったら違うようだ。連れていってもらったのは、ホテル二階にあるイタリアンレストラン。カジュアルではないけれど、気張らないで来られそうなお店である。
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