冷徹御曹司は過保護な独占欲で、ママと愛娘を甘やかす
望と可世さんの行方が知れないまま、一週間が経った。

この件が噂として世間や社内に流れるようなことはなかったけれど、父は本当に大変そうだった。
笛吹社長と豊さんに事情説明と謝罪に赴き、さらに中安議員もまじえての話し合いがもたれた。さすがに中安議員は笛吹社長と豊さんに謝罪したそうだ。奥村家のせいばかりにもできなかったのだろう。

望と可世さんは、中安議員が私的な調査機関を頼って探すと提案したそうだ。しかし豊さんの強い意見で、結局のところ可世さんと豊さんの婚約は解消となった。
経済的な後ろ盾として笛吹製粉と縁を結ぼうと思っていた中安議員には大きな痛手となっただろう。

そして、それは奥村フーズも同じ。いや、もっと状況は悪いかもしれない。

「表向き、契約解除や制裁のようなことは示唆されていないよ」

話し合いから帰った父はそう言った。くたびれ果てた顔をしていた。

「しかし、このままお咎めなしとも思えない。おそらくは、徐々に任される仕事を減らされていくだろう。うちと同じような冷凍食品部門を擁する会社はあるのだから」

奥村フーズは子会社ではない。しかし、笛吹製粉の扱う小麦や米粉などを使って冷凍食品を作り、それを笛吹製粉に卸し笛吹製粉ブランドとして販売している。奥村フーズは笛吹製粉との取引が主だった収入源であり、笛吹製粉なくしては立ち行かない。

「そんな……!」

母の絶望的な声。父はそれきり何も言わなかった。現時点で父が対処できることはない。
なにより、父の落胆には跡継ぎの望がいなくなってしまった点も大きかった。父が祖父から受け継いだ奥村フーズは望が担うはずだったのに。
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