君の甘さには敵わない。
(ああもう、嘘でしょ…)


颯さんを止める気力も湧かず、ただただベッドの上で呆然と2人を見ていると。



「兄貴!七瀬の前で止めろよ!」


2人の兄のやり取りが余程耳に障ったのだろうか。


開け放たれたドアから、この家に住むもう1人の男子である朝樹がいきなり顔を覗かせ、眉間に深く皺を刻みながら声を荒らげた。


「朝樹、」


この状況を傍観している私は、彼の目にどう映ったのだろうか。


2人の兄達から私へと視線をずらした彼は、はぁ、とどこか安堵したかのように息を吐き。


「七瀬は俺が連れてくから。兄貴達はそこで頭冷やしててよ」


颯さんと千晶さんに有無を言わさない程の勢いで、そして私の胸をときめかせる一言を告げると、


「こっち」


先程まで颯さんに掴まれていた腕を優しく取り、私を廊下まで連れ出した。




「…あ、さき、」

 
颯さんと千晶さんを部屋に残したまま、私は朝樹に手を引かれて彼の部屋まで連れて来られた。


私を部屋に入れた彼はドアを閉め、外から開けられないように椅子でドアノブをロックして。


朝樹が先程助けてくれたのは嬉しいけれど、今彼が何をしようとしているのかがまるで分からなくて小さな声で名を呼ぶと。


「七瀬」


ドアの方を向き、こちらに背を向けたままの朝樹に名前を呼び返された。
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