君の甘さには敵わない。
「…許さない。せめて夜くらい、俺がお前を独り占めしたって良いだろ」


その双眸はただ真っ直ぐに私を捉え、彼の手は私が背をつけている壁にしっかりと付いていて、二度と離れたりなんてしない。


その“許さない”がやけに可愛くて、こんな真剣な場面なのに笑いそうになる。


「朝樹、」


確かに私は、散々金井家の男子と居候に愛を伝えられてきたけれど。



彼らよりも何よりも好きなのは、本当に好きなのは、朝樹なんだよ。



そう言いたくて口を開いたのに。




「ん、っ…」


言葉を紡ごうとした私の唇は、彼の温かな唇によっていとも容易く塞がれる。


(…あ、)




颯さんに取られそうだったファーストキス、

ちゃんと、朝樹のものになったよ。





「すき」



私が誰よりも好きなのは、朝樹。



何度も口を塞がれて息ができなくなる寸前、吐息と共に愛の言葉を囁けば、




「馬鹿、…俺の方がすきだって知ってんだろ」




いつもの朝樹なら口が裂けても言わないような甘い声が、彼の口から溢れ出る。


髪が濡れているせいかいつになく甘いマスクが強調された朝樹は、我慢出来なくなったように強く私を抱きしめながら耳元で囁いた。




「七瀬の事、絶対離さねぇから」








ああ、ほらもう。



君の甘さには、敵うはずなんてないんだ。







【完結】
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