エンドロールの先でも君を恋うから
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スマホが鳴ったのは夜の22時25分。
表示された時間と「優羽のお母さん」の文字は、きっともう忘れられない。
「優羽の容態が…っ急変して…!」
「……え?」
「もう、持たないって、先生が……」
病院までは父の車で向かった。車の中は異常に寒くて、ずっと鳥肌が立っていて気分が悪かった。
着くまでの間ただただ震えて、何も考えられなくて。
考えなくても浮かんでくるのは、優羽らしい優しい笑顔だった。
…だって、昼間あんなに笑ってたじゃん。
いつもよりたくさん笑ってて、ベッドからも起き上がってて、顔色だって良くて。
ねえ、優羽
「きょうが、最後ってわかってた、の…?」
病院に着くまで、父の宥めるような声は耳に入らなかった。
これから自分の目に入る優羽を想像したくない。
───あの電話から二十分して、ようやく入院棟までたどり着いた。
暗闇の中、一室だけ明かりのついた個室。病室の入口には「香原(かはら)」の文字が貼られている。
堅苦しい明朝体のそれを確認してすぐ、奥から彼の声が静かに聞こえてきた。