エンドロールの先でも君を恋うから




スマホが鳴ったのは夜の22時25分。



表示された時間と「優羽のお母さん」の文字は、きっともう忘れられない。



「優羽の容態が…っ急変して…!」


「……え?」


「もう、持たないって、先生が……」



病院までは父の車で向かった。車の中は異常に寒くて、ずっと鳥肌が立っていて気分が悪かった。



着くまでの間ただただ震えて、何も考えられなくて。



考えなくても浮かんでくるのは、優羽らしい優しい笑顔だった。



…だって、昼間あんなに笑ってたじゃん。



いつもよりたくさん笑ってて、ベッドからも起き上がってて、顔色だって良くて。



ねえ、優羽



「きょうが、最後ってわかってた、の…?」



病院に着くまで、父の宥めるような声は耳に入らなかった。



これから自分の目に入る優羽を想像したくない。



───あの電話から二十分して、ようやく入院棟までたどり着いた。



暗闇の中、一室だけ明かりのついた個室。病室の入口には「香原(かはら)」の文字が貼られている。



堅苦しい明朝体のそれを確認してすぐ、奥から彼の声が静かに聞こえてきた。
< 11 / 238 >

この作品をシェア

pagetop