15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~
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和輝は納得できていない様子だった。
じゃあ、どうすれば納得できるのだろうと考えても、きっとそもそも納得なんて出来ないのだろうと、私はそれ以上話さなかった。
だって、和輝の知りたい私の気持ちは、私にもよくわからない。
だからか、翌日の夫は少しだけ不機嫌そうに出社した。
彼が不機嫌そうだと気づいたのは、私だけだったろう。
いつもようにパートに出て、和葉が帰る時間に間に合うように帰宅し、和葉を連れてまたパート先に行った。今度は車で。
年に一、二度しか会わない和葉の成長に、哉太くんはいつも驚く。
そして、決まって言う。
「柚葉の若い頃に似てんな」
和葉はそれが嫌らしい。
それがわかっているのに、哉太くんは必ず言うのだ。
「性格は全然違うみたいだけどな」と、楽しそうに。
哉太くんの言う通り、娘は私とは性格がまるで違う。
似ているところもあるが、それは娘ならば大抵が似るであろう母親の口調や仕草。
それ以外は、父親に似ていると思う。
その一つが、優柔不断さ。
因みに、由輝は誰に似たのかズボラな性格で、悩むのにも飽きてしまう。
とにかく、悩み出したらとことんで、この日も、サイン帳とお友達三人へのプレゼント選びに一時間半かけた。
私がラッピングした。
「愛華ちゃんのは何色のリボンにする?」
「……ピンク」
娘の表情が浮かないことに気づいたが、ひとまずは急いで帰ることにした。
「あの店長さんとお母さん、仲いいよね」
家まであと十分ほどの場所で、しばらく黙っていた和葉が言った。
「うん? そうね。店長が子供の頃から、お母さん働いてたし」
「ふーん」
「どうしたの?」
チラッと、バックミラーで私のすぐ後ろに座っている娘を見る。
口を尖らせながら窓の外を眺めている。
「愛華ちゃんと喧嘩でもした?」
「……してない」
「そう? 同じ中学なんだし、卒業が寂しいわけじゃ――」
「――愛華、卒業式に出られるかわかんないんだって」
「え?」
「昨日も今日も休んでた」
卒業式は来週の土曜日。
十日後の式に出席できるかわからないなんて、インフルエンザにしても有り得ない。
「先生が言ってたの? 卒業式に出られないかもしれないって」
「ううん。実紗」
「実紗ちゃん?」
実紗ちゃんは、三年生からずっと同じクラスだが、和葉が嫌っているグループの子だから仲良くはない。
実紗ちゃんのお母さんは噂好きのお喋り好きで、驚くほど情報通。私は苦手だ。愛華ちゃんのお母さんと仲が良い印象もない。
「なんで実紗ちゃんが――」
「――あ、お兄ちゃん!」
すぐに見つけられなかった私は、後続車と間隔が空いているのを確認して、ハザードランプを点け、路肩に停車する。
「おにーちゃーん!」
和葉が窓を開けて手を振った。