15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~
右手の住宅街から歩いて来た学生服の男の子二人が和葉の声に気が付き、こちらを見た。
由輝と嵐くんだ。
嵐くんと愛華ちゃんの家は、二人が来た方向に向かって二丁先。
由輝と嵐くんは手を振って別れ、嵐くんは私たちに背を向けて走り出した。
「嵐くん、送ってあげれば良かったね」
車に乗り込んだ由輝に言う。
「嵐ん家の前の道、除雪酷すぎて車危ないって言ってたし」
「そっか」
さっきまでスーパーに寄ろうかと迷っていたけれど、子供二人とも連れて行くと余計なものばかり籠に入れられるから、諦めた。
真っ直ぐ家に帰ると、冷蔵庫と冷凍庫から晩ご飯になりそうなものを出す。
生姜焼き用の肉が五枚と、冷凍コロッケが三個、冷凍しておいたハンバーグが二つ、餃子が十四個。
どれもこれも中途半端だが、仕方がない。
私は冷凍ハンバーグをフライパンで弱火にかけ、蓋をした。
餃子を作って残った白菜で味噌汁を作る。
これで冷蔵庫と冷凍庫がすっきりしたから、明日はしっかり買い物できる。
大学が休みに入ったため、明日から一か月ほど、私のシフトが激減する。というか、呼ばれたら行く。
味噌汁を作り終えたら、揚げ物鍋と交代。
冷凍コロッケを揚げる。
その間に、キャベツを切る。いつもは持ち替えるのが面倒で包丁を使うのだが、子供たちに食べてもらえないから、今日はスライサーを使う。キャベツが飛び散るし、腕も疲れるからあまり好きではないが、仕方がない。
そうこうしているうちに、由輝が部屋から出て来た。
「お腹空いたぁ」
時計を見ると、もうすぐ七時。
塾がある時は五時半くらいに軽く食べさせて、帰ってから改めて晩ご飯なのだが、今月は高校の合格発表やなんやで塾も忙しいらしく、週末のみ。個人塾だから仕方がない。
「ちょっとは手伝ってよ」
「えーーーっ」
「今時、男の子でも最低限の家事はできなきゃ、女の子にモテないよ!」
「モテなくてもいーもーん」
あー言えばこー言うんだから!
息子にイライラしながら、コロッケをひっくり返していると、娘もやって来た。
「ご飯まだぁ?」
「今準備してるから、手伝って」
「えーーーっ」
「もうっ! 自分の箸とお茶くらい自分で用意しなさい!」
「はぁい」
とは言ったものの、大して広くもないキッチンだ。揚げ物をしている時にちょろちょろされるのは、危なくて気が気じゃない。
私は焦げ目がついたハンバーグを皿に載せ、半分に割って、あとは電子レンジに任せた。
フライパンを洗って、生姜焼きと餃子のどちらを先に焼こうかと考える。
こういう場合、私が決めると大抵、子供たちのブーイングを受ける。
「生姜焼きと餃子、どっちが食べたい?」
「どっちも!」と答えたのは、もちろん由輝。
「どっちを先に焼くか」
「餃子!」と答えたのは、和葉。
私は冷凍餃子をフライパンの縁に沿って並べ、火にかけた。