15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~
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「はい、お土産」
修学旅行から無事に帰ってきた息子が、リビングの床に荷物を広げ、その中の、くしゃくしゃの紙袋を俺に差し出した。手の平サイズだ。
もらえると思っていなかったから、驚いた。
「これは和葉。これ……がお母さん」
全員同じ紙袋だが、よく見ると袋の隅にペンで色がついている。が、俺のには色がない。
「ありがとう!」
和葉が喜んで袋を開ける。俺と柚葉も。
入っていたのはキーホルダーだった。
「え、ナニコレ」
和葉がいかにも気に入らないと、低い声で言った。
「ヒカ〇ン」
「え、なんで」
「東京限定だったから」
そうだろう。
和葉の手に載っているのは、ミツバチの格好をしたヒ〇キンが東京タワーに留まって? しがみついて? いる絵のアクリルキーホルダー。柚葉のは、柚葉と色違いのミツバチヒカ〇ンの頭に小さな東京タワーが載っている。帽子に見立てているようだ。で、由輝のは、普通の服を着たヒカ〇ンが東京タワーの横に立っている。
「ダサ――」
「――ありがとう、由輝」
文句を言おうとした和葉を遮って、柚葉が言った。
和葉の好みでないのは明らかだが、由輝にそれを考えろと言うのは酷だ。
いや、それにしたって、同じ限定なら、和葉にはキ〇ィちゃんとかミッキー〇ウスとかが良かったんじゃ……。
若い女の子の好きなものなんて知らないが、いくら俺でもヒ〇キンは選ばない。
いやいや、つーか――。
「なんで俺はセ〇キン?」
俺のキーホルダーは、スーツを着てサングラスをかけたセイ〇ンで、ご当地っぽさも何もない。
「ヒカ〇ンの三つしかなかったから」
「同じの二つでも良かったんじゃないか?」
「面白くないじゃん」
「……そうか。ありがとう」
嫌がらせのように思うのは、俺だけだろうか。
いや、買って来てもらえただけ良しとしよう。
由輝は晩ご飯を食べながら延々と旅行の話をして、風呂に入るなり寝てしまった。
余程疲れていたのだろう。
和葉はキーホルダーには不満そうだったが、空港で買ったというチョコレート菓子は美味しいと喜んだ。
風呂を終えて寝室に行くと、柚葉が家の鍵のキーホルダーを付け替えていた。
「和葉は気に入らなそうだったな」
「まさかのヒカ〇ンだからね。でも、折角だから、あんまり使わないポーチにつけとくって」
折角とか言いながら、扱いが雑だな。
「和輝は? 付けないの?」
「ガチャガチャして、すぐに傷つけそうだな」
決して、嫌なわけではない。
「確かに」と、柚葉が笑う。
俺はベッドの、妻の隣に腰を下ろした。
「ってか、あいつの土産選びのセンスは、正解なのか?」
「限定ってのがポイントだったんでしょ」
「俺だけ違うし」
「まぁ、兄弟なんだからお揃いも同然じゃない?」
柚葉は由輝に甘い。
母親は、やはり息子が可愛いものなのだろう。
それが面白くないと思ってしまえば、由輝と同レベルになってしまう。
「……違うだろ」と、俺は努めて冷静に言った。
「いじけてるの?」
「なんで」
「自分だけセイ〇ンだから」
「子供じゃないんだから」