時価数億円の血脈
私の人生で同じ空間にこれだけの時間がいるのは初めてのことでストレスもたまったがそれ以上に、気にかけてくれる存在というのはそれだけでこそばゆい存在なんだと知った。

自分はというと、生前整理に務めていた。
お洋服は最低限、家電やアクセサリーなどはネットで売った。
写真は燃やした。もう両親とも会うことはないと思う。

ふと気づいたことがある。
私は今まで身体を売っていたが手放したことがなかった。
魂が分離したした場合、売れるんじゃないかということ。
私は身体の至るところまで捨てるところがない魅力的な商品になるんじゃないかと。


「市風さん」

彼は話を聞いたらどっちかというと、試薬の研究をしている研究員ということだった。
彼は相変わらず無表情に、パソコンから目を離して「なんですか」と聞いた。彼はおもむろにパンダのマグカップにカフェオレを注いだ。

「私のこの血液って売れるんですか。ダイヤの血液」

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