オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
「……亡くなってたんだ」

小さい頃から、親の記憶なんてほとんどない。まして父親なんて、今日初めて苗字を、知った位だ。

それでも、心は冷んやりするのが分かった。

「……そう、なんだ……、どうせ会うことなんてないと思ってたから……」 

「ごめんな」

春樹は、泣きそうな顔で私を見つめる。

「どうして、春樹が、そんな、顔するの?私は大丈夫だよ」 

春樹は、私の唇にそっと触れるだけの口付けを落とす。

「明香……俺の側に居て……何処にも行くなよ」

「……行かない……これから家族は、春樹が居ればいいの」

心からの本心だった。冬馬への想いを消してしまえば、私に、残るのは春樹の、私へのあったかい優しさと、変わらない愛情だから。それに応えて寄り添いたい。

「そんな可愛いこと、言われたら、今日は寝かせてあげられないかも」

子供みたいに、ニッと笑った春樹に、私はこの時、間違いなく春樹との未来を真剣に夢見てた。

「着てみたいドレスがあるの」

「いいよ、次の休みに試着しに行こうか」

あっ、とわざとらしく春樹が声を上げた。

「サイズ測っとかなきゃな。今夜、隅から隅まで測ってあげようか」

私を、安心させるために、おどけてみせる春樹の優しさが嬉しくて、手を伸ばして抱きしめていた。

「春樹……大好きだよ」 

春樹が、ふっと笑うと、私に深く口付けた。

初めてかもしれない。素直に言葉でちゃんと伝えたのは。

愛してると言えるまで時間は、かかるのかもしれない。

それでも、春樹が大切で、大好きな気持ちに嘘はなかった。
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