オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
先に、芽衣と近くのイタリアンで、食事を済ませると、俺達は、芽衣が1番気になると言っていた、『エクセレントダイヤモンド』という、ウェディング専門のジュエリーショップに来ていた。

黒とシルバーを基調とした門構えで、入り口にどこかでみたことある芸能人が、ウェディングドレスを身につけた、等身大パネルが置いてあり、エクセントダイヤモンドの指輪を身につけて、微笑んでいる。

店内には数組のカップルが、顔を寄せ合ってジュエリーケースを覗き込んでいた。


「お待ちしておりました、神谷様。いつもお父様には、大変お世話になっております」

芽衣は、いえ、と小さく答えると、店員について、店の奥へと進んでいく。

芽衣が、事前に連絡していたのと、此処の店の主要取引銀行が、神谷滋が、頭取を務める大津中央銀行のようで、奥にある特別個室に案内された。

「あ、冬馬、ほっとした顔してるー」

「そりゃすんだろ。……慣れてねぇんだから」

店員の後に続いて歩きながら、そっぽを向いた俺を、芽衣が嬉しそうに見上げる。

「何だよ」 

「女に指輪買うのは、慣れてないんだなぁと思うと、嬉しくて」

「ばぁか」

大きな瞳を細めると、芽衣が俺の腕にくっついた。

「神谷様、こちらは、当店で特にダイヤモンドのカットが、綺麗にでており、質も最上級の物ばかりでございます」

上質な黒革のソファーの目の前に置いてあるイタリア製の高級ガラステーブルに、大きなダイヤモンドのついた様々なデザインの指輪が、30個以上は、並べられている。

芽衣は、じっと眺めてから、俺の顔をチラッと見た。

「何だよ?」

「本当にいいの?」

芽衣のこういうところが、素直に可愛いな思う。

ダイヤが大きいものは、車が買える位の値段ばかりだ。俺に買わせるのが、申し訳なく思ってるのが、顔に出ていた。

「好きなのどうぞ」

芽衣は、嬉しそうに笑うと、1番端っこの、テーブルに並べられた中では、1番小さいダイヤモンドがついた指輪を指差した。

「これよりも、もっと小さいダイヤモンドの指輪を見せてください」

店員が、驚いたように芽衣を見るのと、俺が真横の芽衣を見るのが、同時だった。
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