オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
店員が、深々とお辞儀をする中、店の外に出るとすぐに、芽衣が、俺を見ながら左手を、パーにして、にっこり笑った。

「冬馬、ありがとう。すっごく、すっごく嬉しいの」

「てゆーか、お嬢様が、する婚約指輪のダイヤ、そんな、ちっさくていいのかよ?」

芽衣の選んだ、婚約指輪は、プラチナのリングに小さなダイヤが一粒だけついた、シンプルなもので、あの店で1番安価かも知れないと思うほどの値段だった。

俺に、気を使ってるのかと思って、店員と散々、高価な指輪を試着させたが、芽衣は、頑なに嫌がった。

「これが良かったの」

「もっと大きいの買ってやったのに」 

芽衣が、俺の腕に手を絡ませながら、俺を見上げる。

「ねぇ……冬馬、沢山、愛してなんて、贅沢なこと言わない。その代わりね……このダイヤの粒くらいは、私のこと、ちゃんと愛してね」

思わず、すぐに返事できなかった。

芽衣が、そんなことを考えながら、この指輪を選んだのかと思うと、人目も憚らず、抱きしめたくなった。

俺は、人目の少ない路地裏に、芽衣を引っ張り混んで、壁に押しやった。

「ど、したの?冬馬?」

「あんま、可愛いこと言うな」

そのまま、俺は屈むと、芽衣に唇を重ねた。

「冬馬……大好き」

芽衣が、俺の首に手を回すと、背伸びして、もう一度キスをした。

唇を、離した芽衣は、大きな瞳に俺を映しながら、微笑んだ。

「ねぇ、冬馬ケーキ食べて帰ろ」

「何でケーキ?」

「指輪買ってもらった記念」

ふっと笑った俺を見ながら、芽衣が幸せそうに笑った。

幸せにしてやりたい、心からそう思った。

芽衣に、手を引っ張られて、また大通りを俺達は歩いていく。

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