オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
カランと扉を閉めると、暫く黙ってた芽衣が、口を開いた。

「誰?」

少しその名前を出すのを躊躇ったが、俺は正直に話した。

「明香の父親かもしれない」

「そう、なんだ……」

芽衣の声のトーンが、僅かに落ちるのが分かった。

「分かりやすいな、もう明香とは兄妹だから
…心配すんな」

芽衣の頭を、くしゃっと撫でた。

「家に母さんから、預かった絵があるから帰ったら見てみるよ」

「じゃあ、今から帰ろ」

芽衣は、回れ右をすると、もうそこまで見えて来ていたケーキ屋を後にする。

「おい、芽衣、ケーキ優先だから」

「冬馬が、気になるの当たり前だよ、明香さんのお父さんが見つかるかもしれないんだから、帰って絵のサイン、見比べてみよ、そっちが優先!」

俺に人差し指を向けると、芽衣がニコッと笑う。

俺は少しだけ屈んで、芽衣の外れかけたマフラーを巻き直してやると、コツンと額をくっつけた。 

「と、……冬馬、みんな、見て、る……」

芽衣が、しどろもどろで真っ赤になった。

「俺の嫁は出来過ぎだな」

額を離した俺を、芽衣が見上げて笑うと、小さなダイヤモンドの指輪を嵌めた左手で、ぎゅっと俺の掌を握った。
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