オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
「明香、ケーキはいつもの苺でいい?」
「うん、ありがとう。でも春樹忙しいでしょ?無理してない?」
「今日誕生日だろ、仕事なんかしてらんないよ。あと最近残業ばっかだったしね、必ず早く上がる」
「……ありがとう」
頬を赤く染めた明香を見ながら、俺もふっと笑った。
「あ!冬馬バカにしたでしょ?」
「してねーだろ。朝からご馳走様」
春樹といる時の明香は幸せそうに笑うから。
「何だ?まさか妬いてんの?」
春樹が長身を屈めると俺の目を見た。
俺は春樹のこんな風に俺を真っ直ぐに見る視線が苦手だ。見透かされそうで。心の奥底にしまった想いを。
「妬くかよ。女に不自由してないんで」
そう、なら良かった、と冗談ぽく笑うと俺からゆっくり視線を外した。
そのまま春樹はグレーのコートのポケットに明香の掌を一緒に入れた。