オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
俺たちは、家に戻ると、冷えた体を温めるように交互に風呂に入った。

一緒に入っても良かったが、芽衣が案の定、恥ずかしがったからだ。

『冬馬のバカ!エッチ!』

そう言うとこがガキなんだよ、と言いかけて俺は先に風呂に入った。

入れ替わりで入った芽衣を待ちながら、先に出た俺は、放ったらかしにしていた段ボール箱を開けて、中を確認していく。

俺がもってきたのは、主に、母親の遺品だ。

あんなろくでもない母親なのに、なぜだか捨てられず、部屋の片隅にずっと置いていた。

家を出る時に、最後にざっと確認して処分するつもりで持ってきていた。

「冬馬ー、あった?」

シャワールームから出てきた、芽衣が、俺が飲んでいたミネラルウォーター のペットボトルに、手を伸ばすと、残りをゴクゴクと飲み干した。

初めて会ったときの事を思い出して、ぷっと笑った俺をみて、芽衣が頬を膨らませた。

「また、ガキって顔に書いてある」 

「言ってねぇだろ」

「やっぱ、思ってるんじゃん」
 
「早く風呂くらい一緒に入れるようにならないとな、ガキ」

タオルでショートカットの髪の毛を拭き上げながら、拗ねた芽衣が、俺の横にちょこんと座る。 

「これ、母親の遺品」

段ボールの一番底から、俺は、その絵を取り出した。見るのはもう20年ぶりかもしれない。

「……明香さんに……似てる」

芽衣が、絵を見ながら、小さく呟いた。

雪が降る中、黒髪の小さな女の子が、誰かに手を伸ばしている。その小さな手の先の誰かは描かれていない。

「誰かに手を伸ばしてる?」 

「……母さん……?」 

「冬馬と明香さんの?」

「わからないけど、何となく……」

俺は、何故だか、そう思った。黒髪の女の子が明香がモデルだとしたら、その女の子の目線や手を伸ばした高さからして、書かれていないが誰か親しい大人に向かって、手を差し伸ばしているように見えた。

「サイン、やっぱり同じだね」

絵の右下には、
『Kenichi.Y』の文字だ。

山下賢一と平山理恵子の間にできた子が、明香ということで、やはり間違いないのか?

「母さんが死ぬ間際に、この絵は、明香の父親の書いた物だからって俺に託したんだ。この絵を俺に託すってことは、いつか明香を探して山下賢一訪ねてくるかと思っていたが、結局、一度も訪ねては来なかったけどな」

「そう……」

「とりあえず、連絡待ってみるか」

俺は、絵を段ボールの底に置くと、その辺りに雑多に置いておいてある理恵子の遺品を仕舞っていく。

雑に掴み上げた、俺の手から、理恵子の使っていた手帳が滑りおちて、バサッと写真が散らばった。

芽衣が、さっと拾い上げていく。
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