オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
「これ、冬馬……?」

見れば、理恵子を挟んで、ニコニコと笑う3歳の明香と、ほっぺたに絆創膏を貼り付けながら不機嫌そうに、膨れた4歳の俺が写っていた。

「……あぁ、そんなんもあったんだな、忘れてたわ、母さんと明香と俺の写真」

「ふふっ……冬馬、可愛い」

「恥ずかしいから見んな」 

「絆創膏似合ってる」

「似合いたくねぇよ」

芽衣が、隣でケラケラと笑った。

「明香さんは、お母さん、そっくりなんだね」

黒髪に、大きな黒い瞳、小さな鼻に、ふっくらした唇、全部母さん譲りだ。明香の笑うと出る片側だけのエクボだけが違うくらいだ。

「まあな、俺は最悪なことに、アイツに似てるからな」

「最悪って、……冬馬、顔いいと思うよ」

ぷっと笑った芽衣の頭を、俺は小突いた。

二人で、俺と明香の子供の時の写真を、数枚めくっていった最後の写真に、俺と芽衣は、一瞬視線が止まった。

まだ若い時の理恵子と、頬を寄せ合って、隣に写るのは、

ーーーー松原幸之助だった。

「……幸之助おじ様の……こんな幸せそうで、優しい笑顔みたことない……」

思わず、ぽつりと発した芽衣の言葉に俺も、同感だった。

あの、顔の表情なんて、まるでない無機質なイメージの幸之助が、愛おしい女性の前でしか見せないような、その柔らかい笑顔に、俺は、会社のデスクの上に置いてある、明香の隣に写る自分自身が重なった。

以前春樹が、言っていたことを思い出す。

『あんな父さんだけど、理恵子さんのことは本気だったんじゃないかな?』

愛人の子である、俺に対しての春樹の優しさなのかと思っていたが、幸之助(アイツ)のこんな顔をみると、母さんのことは、本気だったのかもしれない。
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