オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
「ご新郎様、お忙しいんですね」

「そうみたいです」

小さく笑った私を見ながら、プランナーの女性が、でもとても素敵なご新郎様ですね、と微笑んだ。

試着室に入って、カーテンを閉めると、プランナーの女性が、後ろからドレスのホックを外してから出て行く。

私は、ドレスとパニエを脱ぐと、ドレス用の下着から自分の下着へと付け替えた。

胸元から太ももあたりまで、春樹のつけた赤い痕が、沢山付いている。春樹が、私と冬馬のことを気づいた頃からだった。

以前は、こんなに沢山つけることがなかった春樹のキスマークは、色が薄くなることなく、常についている状態だ。

私は、もうどこにもいかないのに、春樹が無意識に、私が冬馬のところへ行くんじゃないかと不安になってる気がして、キスマークを見るたびに切なくなる。

私は、ブーケの見本と見積書、ウェディングドレスの試着の写真を受け取ると、ホテルのエントランスを出た。

外に出れば、今まで暖かい空間にいた分、鼻先がツンとして、風が髪の毛を切るように冷たく拭き撫でていく。

手元の時計を見れば、まだ12時を回ったところだ、家に帰っても、夕飯を作るくらいだ。

たまには駅まで歩こう。私は春樹に買ってもらった、真新しい、真っ白なマフラーを巻き直すと駅へと歩き出した。


見上げれば、冬空からは、ポツリポツリと雪が降ってきた。傘を持ってない私は、急ぎで駅まで歩く。駅の改札をくぐり抜けてると、ちょうどきた電車に乗り込んだ。

規則的に揺れる、電車の吊り革にぶら下がりながら、車窓に映る、私を眺めていた。

首元に撒かれているのは、春樹がプレゼントしてくれた、真っ白なカシミヤのマフラーだ。真っ白なマフラーが、鮮やかなブルーに見えるのは、何故なんだろう。

春樹と一緒にいると考えないことを、一人になると考えてしまう。


『会いたい……』


言葉に出せない想いは、心の中に雪のように一粒ずつ、少しずつ積もって、重なっていく。
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