オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
冬馬は、今頃、どんな顔して、芽衣さんの側に居るんだろう。

冬馬は、口は悪いけど、本当に優しい。きっと複雑な環境で育った冬馬は、誰よりも温かい普通の家庭を求めてる。

結婚したら、芽衣さんを、きっと誰よりも大切にするんだろう。

目的地の駅に着き、改札の階段を登った時だった。

相手も、すぐにこちらに気づく。

とくん、とくんと鼓動が早くなるのを抑えるように、私は胸元に手を当てながら、冬馬の目の前で歩みを止めた。

「……久しぶりだな」

冬馬は、柔らかい茶髪を掻くと、私から視線を逸らした。

「こんなとこで……会うなんてね」

さっきまで、ポツリポツリと降っていた雪は、あっという間に白い水玉になって、無数に空から降りてくる。

「傘ねぇの?」

冬馬は、私に、黒い傘を広げて差し出した。

「え?でも冬馬は?」

「あ、俺はちょっと飯食って帰るだけだし、濡れても、お前みたいに風邪ひかないから」

唇を、持ち上げると冬馬は、じゃあな、と言って通り過ぎて行く。


その後ろ姿はあっという間に小さくなっていく、私は気づいたら走り出していた。

「冬馬っ!」

冬馬の腕を、私は、強く引っ張った。

冬馬は、驚いた顔をしたまま、私をじっと見つめた。

「どした?……春樹となんかあった?」

「……何にも……ないよ」 

ただ、久しぶりに会った冬馬と、もっと一緒に居たくて、声を聞いていたくて、気づいたら追いかけていた。

冬馬が、小さく溜息をついた。

「飯たべた?」

首を横に降った私を見ながら、冬馬が、傘を取り上げると、私が雪に濡れないように傘を挿した。

冬馬と相合傘するなんて、いつぶりだろうか。  

思わず見上げた、背の高い冬馬と目が合って、私は、すぐに綺麗な薄茶色の瞳から、目を逸らした。

「飯だけな。春樹にちゃんと、言っとけよ」

「うん……」    

歩くたびに、こつんと当たる冬馬の肩に、顔が熱くなりそうな私は、冬馬に見られないように少しだけ俯いた。
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