オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
「もしもし」
『……明香は?』
「あぁ、隣で寝てる」
『なぁ、冬馬、悪いけど、明香寝てるなら、今すぐ、連れて帰ってきてくれないか?』
珍しく焦った様子の春樹に、違和感を覚えた。
「山下さんとこ行かずにか?」
『……悪いけど』
「珍しいな、お前が、理由も言わないなんて。
そもそも……何で死んでるって、明香に嘘ついた?」
春樹は、黙ったままだ。
「春樹?明香に、山下さんを会わしたくない理由って何?」
『……ごめん』
電話だから、春樹の表情までは分からない。
ただ、泣いているのかと、一瞬よぎるような声色だった。
『……分かった……今から明香連れて帰る』
その時、グイッと俺のスマホを持つ左手が、引っ張られる。
「え?」
いつの間にか目を覚ました明香が、俺の手首を掴むと、そのまま俺の持っているスマホを、耳元に当てた。
「おい、明香っ」
「私、帰らないっ。山下さんに会ってみたいの」
スマホ越しに、春樹の声が聞こえるが、何を明香に話してるのか、俺にはわからない。
「……春樹、どうして嘘ついたの。……やだっ……分かんないよ…………帰らないっ……」
春樹に、嘘をを吐かれたことが、やはりショックだったんだろう。
明香は、涙声だ。
「……冬馬と居るっ……山下さんに会ったら、帰るからっ」
それだけ言うと、明香は、一方的に通話を切って、電源を落とした。
春樹に対して、こんなに感情的になる明香は、初めて見たかも知れない。
「……ひっく………ふ……っ……」
「明香……」
大きな瞳から、溢れた涙を、俺から隠すように、明香は窓の方を向いた。
俺は、気づいたら手を伸ばしていた。
明香の華奢な身体を包み込んで、そのまま背中を摩ってやる。
「……冬馬……ひっく……」
明香が、俺の背中に両手を回すと、皺になる程に強くシャツを握りしめた。
「大丈夫だから……泣くな……」